梅雨時期に注意したい主な健康被害には「食中毒」があります。
家やお店での食事だけでなく、職場や学校に持っていく「お弁当」を食べたことが原因となって食中毒を引き起こしてしまうケースも多いのです。
ここではまず、梅雨時期に起こる食中毒の種類と原因、梅雨時期~夏期になぜ食中毒が起こりやすいのか、お弁当づくりではどういったことに注意すればよいのかを解説します。
次に梅雨時期のお弁当の保存のしかたとして、保冷剤や保温弁当箱は食中毒の防止に効果的なのか、どのように使用すればよいのかといったことを説明します。
そして最後に梅雨時期のお弁当のおかずではなにがおすすめなのか、作り置きのおかずでも大丈夫なのかなどの情報を提供します。
お弁当を持って出かけるすべての人にとって知っておいて損はない情報ばかりですので、以下の内容をぜひチェックしてください。
梅雨時期のお弁当の食中毒対策
梅雨時期~夏期には「細菌」によって引き起こされる食中毒が多発しています。
この細菌によって起こる食中毒には、細菌性「感染型食中毒」と、細菌性「毒素型食中毒」の2種類が存在しています。
細菌性感染型食中毒は、食品のなかにいる細菌が、食事で摂ることにより体内に侵入し、腸内で増殖することによって食中毒が引き起こされるのが特徴です。
一方、細菌性毒素型食中毒は、食品のなかで増殖した細菌から生み出される毒素を摂取することによって、食中毒が引き起こされます。
細菌性毒素型食中毒の毒素が耐熱性の場合、加熱などにより細菌自体をやっつけたとしても、食中毒を招いてしまう恐れがあるのが特徴です。
食中毒の種類
細菌性感染型食中毒の種類
- カンピロバクター
- 腸炎ビブリオ
- 病原性大腸菌
- サルモネラ属菌
- ウェルシュ菌
- リステリア菌
- 赤痢菌
- コレラ菌
細菌性毒素型食中毒の種類
- 黄色ブドウ球菌
- ボツリヌス菌
- セレウス菌
細菌によって潜伏期間や症状などに違いがあります。
梅雨時期は食中毒が起こりやすい
梅雨時期~夏期に食中毒が多発する理由ですが、まずこの時期の環境が主な理由のひとつです。
梅雨時期~夏期は高温多湿になりますが、細菌にとっては好条件であり、増殖を助長してしまいます。
このほか、私たち人間の体調も、この時期に食中毒を起こしやすくなる理由のひとつといえます。
夏になると夏バテする人が多く出ますが、こうした体調不良によって抵抗力がダウンすると、食中毒を起こしやすくなってしまうのです。
また、少量の細菌の場合、摂取しても胃液で殺菌されて食中毒が引き起こされることはありません。
しかしながら、水をたくさん飲んだことで胃酸が薄まっている、胃薬を使用して胃酸の分泌が抑制されている状態では殺菌をすることが困難になり、食中毒を引き起こしやすくなる場合があります。
お弁当の食中毒対策
お弁当づくりで気をつけることですが、お弁当に使用する食品は買ったあとなるべく早く冷蔵保存しましょう。
細菌は10度以下の条件では増殖が遅くなり、マイナス15度以下では増殖がストップします。
また、料理をはじめる(食品を手でさわる)前に手洗いを必ず行ないましょう。
なお、手に付着している細菌は水だけでの手洗いでは除去することができません。
手洗いを行なう際にはせっけんを使用し、手だけでなく手首のほうまで、また指のあいだや爪のなかまで念入りにきれいにしましょう。
調理器具の殺菌
このほかに注意したいのは調理器具の殺菌を怠ったことで食品に細菌が付着することです。
洗剤で洗ったあと水で洗い、55度のお湯ですすいで沸騰水をかけるか、沸騰水ではなく次亜鉛素酸ナトリウム(濃度200ppm、1時間浸漬)で調理器具の菌をやっつけましょう。
また、肉などを焼く調理をする際には、生の状態の肉に触れる箸と、焼いたあとの肉に触れる箸は別々に用意する、生肉や魚を切った包丁やまな板で、生野菜などを切ることをしないというのも、食中毒防止のためには大切です。
それから、食品は高温で加熱するのも効果的です。
耐熱性の毒素には無効ですが、75度で1分間以上加熱することにより、菌をやっつけることが可能です。
レンジを使用する場合、食品の中心部にまで熱が伝わった状態で、上記の温度と時間、加熱をすればOKです。
熱がなかなか伝わらないものを温める場合には、時々かき混ぜるとよいでしょう。
梅雨時期のお弁当の保存方法
梅雨時期のお弁当の保存のしかたとして、保冷剤や保温弁当箱を使用するのは有効なのか、疑問に感じている人もいるのではないでしょうか。
このことに関してですが、両方とも食中毒の予防に効果的です。
保冷剤の使用方法
まず、保冷剤の使用方法ですが、お弁当箱のフタの上に置きましょう。
なぜフタの上なのかといいますと、冷たい空気は上から下へと流れるからです。
保冷剤を使用するのであれば、保冷剤一体型のランチボックスが便利で人気があります。
このランチボックスはフタに保冷剤が内蔵されているので、冷凍庫で凍らせてフタをすればOK
なお、保冷剤とセットで使用したいものとしては保冷バッグを挙げることができます。
持ち運びに便利なだけでなく、保冷剤だけを使用する場合より持ちをよくすることが可能です。
保温弁当箱について
保温弁当箱については、夏などの暑い時期に使用すると食中毒が起きやすいのではと多くの人が思っているのではないでしょうか。
これについては保温弁当箱に詰めたもの全てが保温されると勘違いされているからかもしれませんが、基本的にはごはん容器と味噌汁などを入れるスープ容器が保温され、おかずの容器は保温されません。
保温弁当箱に詰める時の注意点
ご飯やお味噌汁は炊きたての熱い状態のままで容器に詰めてすぐにフタをしめる。
保温機能のないおかずの容器には、おかずを十分に加熱し、容器に詰めてよく冷ますことがポイントです。
※おかづに関しては使用する食材(傷みやすい)には十分な注意が必要です!
お弁当用の抗菌シート
そのほか、梅雨時期のお弁当で食中毒を起こさないために、お弁当用の抗菌シートを使用するのもおすすめです。
お弁当箱にひととおり食品を詰めたあと、上に抗菌シートを敷いてフタをするだけと、使い方は簡単です。
これだけで菌の増殖を抑制する効果が見込めますので、対策を徹底したい人はぜひ取り入れてみてください。
梅雨から夏期のお弁当におすすめのおかずは?
梅雨から夏期の食中毒を未然に防ぐために役立つおかずは、殺菌効果があるものです。
なかでもおすすめなのは「梅干し」で、ご飯の真ん中に置くいわゆる日の丸弁当にするのではなく、梅干しをほぐした状態にして全体に混ぜると効果的です。
食中毒対策におすすめの食材
- 梅干しより強い殺菌作用がある「わさび」
- わさびと同様に毒消しとしてよく知られている「しょうが」
- 抗菌や防腐に効果的な「大葉」
- 高い防腐効果が見込める「ターメリック・ウコン」
- 強力な殺菌作用がある「酢」
- O-157の対策としても有効な「抹茶・緑茶」
これらの食材は食中毒を防ぐためのお弁当づくりに役立ちます。
作り置きしたおかずは大丈夫?
おすすめのおかず以外で気になるのが、前日に作り置きしたおかずをお弁当に使用しても大丈夫なのかということです。
このことに関してですが、少しでも食中毒を起こす確率を低くしたい人にはおすすめしません。
食中毒の原因菌が一定量まで増殖すると、食中毒を発症してしまいます。
増殖を防止するため、梅雨時期や夏場にはお弁当の作り置きはしないのが基本です。
おわりに
ここまであげた対策を実践していても、100%梅雨時期~夏期の食中毒を予防できるとは限りません。
もしも吐いてしまったりお腹を下してしまったりといった食中毒の症状が引き起こされたときには、原因物質を体外へと追い出すために水分補給を十分に行ないましょう。
症状をどうにかしようとして吐き気止め、下痢止めなどの薬を使用すると、原因物質が体外へと排出されず、症状の治りが悪くなったり、重症化したりする恐れがあります。
このため、自己判断・素人判断で薬を使用するのではなく、症状が出た場合には病院に行くことをおすすめします。
なお、病院に行く際には摂取したもの、嘔吐したもの、食品の包装、購入した店舗のレシートがあると、食中毒の原因を探ることなどに役立ちます。
また、食中毒を発症した場合、人にうつさない、食中毒の人にうつされないようにすることも大切です。
調理前、食事前、トイレ後、便や嘔吐したものに触れたあとには十分に手洗いを行なう
食中毒の人はキッチンを使用しない、食中毒の人が使用した食器・調理器具は洗剤で洗う以外に沸騰したお湯をかけて消毒を行なう
食中毒の人の服は別に洗濯する、食中毒の人は最後に入浴し、湯船のお湯は毎日新しいものにする
食中毒の人が入った風呂の残り湯を洗濯に使用しないというのが、人にうつらないようにするために実践すべきことです。